考察・感想倉庫

好きな作品の考察や感想をゆるーっとまとめていきます。たまにレポもあり。

2021/09/04 13:00 SF時代活劇「虹色とうがらし」感想

どうも、毎度お久しぶりです。

考察ブログにするつもりが、そんな記事は一本もなく…ごくまれに更新する観劇ブログになりつつあります。何はともあれ、今回は虹色とうがらしの舞台を見てきたので感想をば。

 

私は好きな漫画家を教えてくださいと訊かれたら「あだち充!」と即答するあだちファンなのですが*1、令和の時代にあの「虹色とうがらし」が舞台になるとは…見逃すわけにはいくまい!ということで。

 

今週のサンデーでも読むかと思っていたら突然「虹色とうがらし」の舞台化情報と原作リスペクトが半端ないメインビジュアルが飛び込んできたあの時の衝撃を今でも思い出します。

このご時世なので少し悩みましたが、場所が都内だったのと、よく「虹色とうがらし」をこの時代に…という感謝と、メインビジュアルが本当に本当によかったのと、なにより昔好きな漫画の舞台が観れなくてめちゃくちゃ悔しかった経験があった*2ので、秋には少しでもコロナの状況が良くなっていますように…と祈りながら原作先行チケットを取ったのでした。

 

 

※例によって原作・舞台のネタバレがあるのでご注意ください※

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あいにくの空模様でしたが、駅から劇場に向かう間はやんでました。ラッキー。

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虹色とうがらしのグッズ。令和にグッズが出ることに感謝。
ブロマイドは全部あたりじゃん!とはしゃいでランダムで1枚。省吾でした。

2021/09/04 13時開演の回@あうるすぽっと

脚本:鳥澄若多 演出:佐藤慎哉(アナログスイッチ)

企画制作:スーパーエキセントリックシアター

 

入場時に半券に名前と電話番号を書かされました。有事にはこれで確認するんですね。キャストさんお客さんスタッフさん全員何もありませんように。

男女比は半々くらい。人気なキャストさんがたくさん出ているのでお客さんはどんな感じなんだろうとワクワクしていたのですが、老若男女、おじいさまからお子様連れの家族までいてびっくり。私はかなり前のほうの席だったのですが、原作先行が前のほうだったのかな?他にも原作先行特典の色紙持った方がいたので。本当のところはわかりません。

座席は結構埋まっていました。収容人数の50%以下にするということだったので市松かなと思っていたのですが、今は市松ではない模様。(舞台にはあまり行かないので計算がよくわからない)

とはいえ、物販もトイレも特に混んでるタイミングはなかったし、おしゃべりしている方もいなかったのでのんびりできました。

 

さてさて。

感想を一言でまとめると、原作愛にあふれたとっても素敵な舞台でした!

原作を読み返しつつ、期待十分、そんな自分に不安半分で当日を迎えたのですが、予想をはるかに上回る完成度でした。いいものを見せてもらいました。

 

とにかく、ボリュームがすごかったです。10巻以上ある原作をほぼ全部やるとは…。
ビリーと木豆大島がサクッとカットされていましたが、それでも流れを汲み変えつつそれ以外をまるっと2時間半弱でまとめ上げた構成には舌を巻きました。すごい。

 

そして、何よりもキャラクター達が漫画そのまんまなんですよ…。特に胡麻兄、芥子兄、彦六、将軍、赤丸。いや多いな。この辺りはあだち劇団の役者さんたちでしたね。あだち劇団って実在したんだなあ。胡麻兄芥子兄コンビ最高。

琴姫もよかった!原作のちょっとうざいわがまま娘なところはそのまま、原作以上の愛嬌もちょっとプラスされていてキュートだった…。

七味はあだち劇団からするとちょっと熱血だなって感じもあるんですけど、そもそも七味というキャラクター自体があだち主人公の中でも断トツで真面目なんですよね。そう考えるとまさしくあれは七味だったなあと。

 

あと、あだち作品ってよく「間」とか「空気感」が話題になるじゃないですか。私もそこが大好きなのですが、それ故に実写化やメディアミックスが一筋縄ではいかないと言われているアレ。今回の舞台では、そういうあだち作品としてのらしさを出すことよりも「虹色とうがらし」をどう舞台化するか?というところに重きが置かれていたような気がして、個人的にはそれがとても良かったです。もちろんあだち作品らしいメタネタだったり、小気味よいやりとりもたくさんあるのですが、それ以上に兄弟愛だったり、科学の発展にどう付き合うかみたいな作品の主題が前面に出ていて、まさに「虹色とうがらし」の舞台化でした。

 

そして、なんといってもアクション!全体の半分以上はアクションシーンだったような気がします。さすが活劇。みんなくるくる回るしガンガン斬り合う。

七味の伸びる鳶口(って言うんだって、調べた)を使っての殺陣もかっこよかった。普段は背中に差しているのがまた様になっていて良い…。

あの虹色の舞台から平気で飛び降りるし、出たり入ったりの立ち回りでステージの広さ以上の奥行を使っていてハラハラドキドキでした。これは生の舞台ならでの空気感だなあ。楽しかったです。

 

 

以下細々とした感想を箇条書きで。

・虹色の舞台、どうやって使うんだろう?って思ってたら、初っ端から地球になって感動…。あと、個人的に麻次郎の部屋になったところでおおっ!っとなった。長屋の奥行が出ている…。

・〇〇之母之墓の使い回し、あまりにもわかりやすくて笑った。こういうのあだち感あって好き。
・からくり長屋の文字とか、手配書の絵とか原作まんま使ってていいなー!ってなった。手配書、原作絵グッズとして売って欲しかったな…。

・しかし舞台ってすごいな…プロジェクションマッピングも使ってはいるんだけど、なんで同じ舞台の上にいるのに、照明の当て方とかちょっとした大道具で背景が違って見えるんだろう。いつも不思議。

・序盤の彦六、登場しただけで一気にあだちワールドに持っていかれてとても惹きつけられた…。まさに空気が変わった気がしましたね。

・菜種可愛かった。こりゃあみんな攫いたくもなりますぜ。個人的に、山椒にお姉ちゃんしてるとこがすごく好き。

・山椒の演技がすごい。8歳みたいだけど、ちゃんと3,4歳に見えて…。なにかと手を振ってるのが可愛かったですね。カーテンコールでは拍手しながら思わず手を振っちゃった。

・陳皮の魔法の粉のくだりは原作知ってても胸にきたなあ。お母さんのお墓に供えたお花、よく見えなかったけどちゃんと貝殻でできてたのかな?

・陳皮が一番好きなのでもうちょっと陳皮のすごい発明の数々を見たかった気持ちはある…。魔法の粉のドローンとか…。

・これは原作の話にもなるんですけど、七味って序盤から陳皮にけっこう嫌味言うんですよね。陳皮は真面目だからすぐ怒っちゃうけど。七味にとって一番初めに兄弟として仲良くなれたのはきっと陳皮なんだろうな。こういう素のやり取りが家族感あって本当に好き。

・麻兄はまんま麻兄なの、ずるいよなあ。手配書みて七味と麻兄が兄弟と気がつくシーンが好き。コミカルなんだけど、お互い距離感をどう縮めたもんかみたいな微妙な心情がギュッと詰まっててふふってなった。

・浮論は原作よりも妹愛溢れてた気がする…。原作だと、大好きで、でも殺めてしまった義父の娘…という視点から菜種を大事にしている側面が強かったんですけど、義父とのエピソードがさらっとしていることもあってより直接的に妹として庇ってたるように感じたのかな。

・最初に浮論のシーンから始まったというのもあるのかな、七味とか麻次郎とも兄弟らしい空気感がじんわりと出ていた…。すごい。

・省吾は逆に悪役に徹してましたね。貴光もだけど、小物でもなく、いいやつだったフォローもない、ほかのあだち作品にあんまりいないタイプ。お母さんの着物のシーン、燃やすわけにもいかないしどうするんだろうと思っていたら、着物が破れた…。破り方が美しすぎて、どうやって破ったのかすごく気になる。仮糸?マジックテープ的な?

・省吾が手配書放り投げて貴光がキャッチするところ、地味にすごかったな…。

・バン艦長のカタコト具合は絶妙でしたね。わざとらしくないカタコト…。

・アンサンブルの方々は一体何役こなしていたんだろう…。七味もアドリブでツッコんでたけど、ものすごい数の役を担ってくださったお陰でテンポよくいろんなシーンを詰め込めたと思うとすごいなあ。最後狼?になったところはちょっと面白かったけど、シーンとしてはシリアスになりきってたのもなかなか。

・コミックとパンフレット宣伝のアドリブタイムも楽しかったな。赤丸が「ブロマイドもあります。貴光も出ます。はずれです」みたいなこと言ってたんだけど、赤丸なら絶対こういう言い方するなって感じでにこにこした…。貴光が「嫌いにならないでくださいね」みたいなフォローいれてて、原作で好きになる要素あんまりない貴光のことちょっと好きになっちゃった。

・菜種のいやだなあのシーンは最高でしたね。ちょっと泣いた。

・二光江戸村、舞台では兄弟全員で来れてよかったね。全員での大立ち回りも一人でかなり盛り上がってました。

胡麻兄、乱闘シーンで1人だけ戦ってなかった気がする。私が気が付いたのは途中からだけど、その時は山椒の後ろにそれっぽくくっついてるだけだった。最高。ここは見所ですね。もう一度じっくり観たい。

・鉢巻外した絵美さんの色気すごくない????これはもてますよ、そりゃ。

・私はほんの一瞬麻次郎と絵美さんの間にいい感じの雰囲気が流れたの、見逃していませんからね。

・良い感じの雰囲気とは違うけど、最後琴姫と陳皮が仲良くなってたの、原作ではそういうシーンないものの、確かに新しいものに興味津々なあの二人は相性いいだろうな~と。これは新しい発見。ただ、陳皮がにこにこしながら銃口覗いてたのはドキッとした…暴発気を付けて…。

・半蔵はかっこよくなりすぎで卑怯ですね。さらっとバク転するのもずるい。

・半蔵の辞世の句、原作最初に読んだときにめちゃくちゃ泣いたので、赤光が余韻たっぷりにぶち壊してくれていてよかった。

・(最近読み直して、記憶以上に半蔵の護衛が適当でこんなんだったけとなった…半蔵のことを美化しすぎていた)

・虹のヒビは浮論の最期のためだったんだね…。公演直前に壊れちゃって直せなかったのかなとか内心ドキドキしてた笑。

・1番原作と変わったのは貴光のラストとバン艦長まわりだけど、まあこれはこれで良いまとめ方かと。特に貴光はより兄弟愛に重きを置いた終わりというか…。原作がなかなか打ち切りな最期だっただけに、あだち作品らしさとはまた違うものの良い終わりなのでは。

・原作の秋光は、すべてを知った後貴光のこと許したかな…と考えてしまう。切腹する情けくらいはくれるだろうけど、きっとああいう許し方はしない気がする。意外と強かだし。ただし、舞台の貴光って武器の製造とか秋光を陥れた上での民の人心掌握はしてないんだよね。そう考えるとぎりぎり許せる範囲なのかなあ。ううん。

・バン艦長が異人始末した時のキレ者な将軍のセリフがカットになったのはちょっともったいなかったかな。あそこ好きなので。

・虹色とうがらしが取り上げてる環境問題って、原作が書かれた当時の環境問題観で。今の考え方とはまたちょっと違うところもあるんだけど、まあこれもある意味時代考証口出し無用なSF時代劇らしさかもしれない。

・カーテンコールで最後に漫画のシーンとともに「原作 あだち充」って出てくるんだけど、胡麻兄の桂さんがもっともっと拍手!!って煽ってたのが、好き…ってなった。

・そもそも最後にバーンとあだち充の文字が出てくるのは良すぎますね。ありがとうございます。

 

 

DVDを買うかは観終わった後に決めようと思っていたのですが、終演後すっと物販列に並んでいましたね。ええ。届くのが今から楽しみです。

 

ちなみに観劇アンケートにこんな項目が。

今後あだち充先生や少年サンデーの作品で舞台化を期待する作品がございましたらお教えください。

短編も含めて全あだち作品舞台化を検討しましたが、うーん、やっぱり虹色とうがらしが一番舞台向きだったと思います。いつも美空とかスローステップも一瞬頭をよぎりましたが…今は虹色とうがらしの舞台が観られた満足感のほうが大きいかも。

 

改めて、「虹色とうがらし」にスポットを当てて舞台を作り上げてくださった方々、本当にありがとうございました。一あだちファンとして、とてもとても贅沢な体験でした。しばらくはにやにやと余韻に浸って過ごそうと思います。

千穐楽の配信、どうしようかな…。

*1:一番好きなのは「ショート・プログラム

*2:稲垣吾郎宮沢りえ版「七色インコ」です。2000年公開なので自分いくつだよという話なのですが。当然のようにDVDもなく泣きました。再舞台化ありがとう…